三重大学社会連携研究センター/HOME  >  広報誌等  >  産学官民連携マガジン Yui−結−  >  吉村 哲郎 招聘教授/名誉教授

広報誌等

村 哲郎 教授

三重大学大学院 工学研究科
リポソームバイオ工学研究室

【専門分野】
生物工学

【研究テーマ】
リポソーム(人工脂質膜小胞)の医学への応用

世界で初めてコイヘルペスウイルス病に対する経口リポソームワクチンの開発に成功し、実用化を目指している。また、組換えプロテオリポソームの開発にも成功し、自己免疫疾患の診断薬及び脳標的化リポソームへの応用展開を図っている。最近、リポソーム自動製造装置の製作にも成功した。

垂直思考ではなく、水平思考をすることで見えてくるもの


吉村 哲郎 招聘教授/名誉教授

Tetsurou Yoshimura's DATA FILE

年齢:66 歳
出身地:奈良県
平均睡眠時間:6 時間
平均起床時間:午前9 時
趣味:音楽、囲碁( 最近は全て御無沙汰)
好きな食べ物:野菜
嫌いな食べ物:甘酢(らっきょう、酢レンコン等)
三重県の中で好きな場所:杉林
座右の銘:五訓:1 体力、気力、胆力、2 単純明快、3 大局観、4 無党派、5 非凡なる凡人
好きな本:禅の書( 榊莫山著)
好きな映画:砂の器
尊敬する人:周恩来

どんな学生時代を過ごされましたか

私が大学生だった頃は、いろんな大学の理学系学部、生物学だけでなく、化学や物理学専攻の学生が集まって、何ができるのか、どういった研究を行っていくべきなのかを話し合い、探究するサークルをつくっていました。熱心に学問について話し合いましたし、キャンプに行ったりといった遊びもその仲間達と一緒に楽しみました。今の学生達をみると、どちらかというと個人主義で、“まとまり”というものが昔に比べて弱くなっている気がします。また、画一的な受験の体制にも問題があるのでしょうが、能力別に輪切りが進み、例えば学科の中で学生に個性の幅というものがあまりなく、お互いの間で刺激の遣り取りが少ないように感じますね。

研究で成果を挙げるには、どんなことが重要だと思われますか

ポイントは二つあると思います。一つ目は、第一線でなくサイド( 裾野) に目を向けるということですね。第一線の研究は、競争が激しいしコストもかかるので、地方大学では、なかなか太刀打ちするのは難しいと思います。でも、ちょっと視点を変えてみると、見落としているところにチャンスがあります。その部分に目をつけることですね。そのためには今、世界全体で何を皆が目指しているのか、目指すべきかを把握する洞察力が必要となります。

二つ目は、垂直思考ではなく、水平思考をすることです。垂直とは、常識的で、一般的な考え方。そうではなく、ちょっと水平に物事を見てみると新たな発見ができます。碁で、定石というのがありますが、大局を観て、定石を打つのではなく、ちょっと変わった動きを加えてみると勝つことがあります。そういった、ユニークさをもつことが重要です。

研究者に向いている人というのはあるのでしょうか

そうですね、優等生ではなく、能力でいうと真ん中あたりの人が向いていると思います。そういった人は興味だけで努力をしますので、ある時、とんでもない瞬発力ですばらしい成果を出すことがあります。それは、例えば楽器などでも一緒で、才能がないと言われていても、好きで好きでこつこつ練習を続けていくと、ある日すばらしく感動する音色が出ることがあり、これと似ています。

ただ、研究の世界では、世界初の論文を出しても、国際競争の中の駆け引きで、負けてしまうことがあります。そういうことは、私も経験しています。研究者は、真面目にこつこつと研究だけすればいいのではなく、事業家肌でないとやっていけない時代になり、そのような才覚も必要です。自分のことをいうと自画自賛になりますが、私も、実は昔すごく内気で身体も気も弱いタイプだったのですが、今は昔の友だちに、変わったと驚かれています。