一言アピール

研究テーマ

1. ●光の特性を活用した植物工場および生物生産施設
2. 　植物栽培における環境要素のうち光環境は光合成のエネルギー源であると同時に、植物の形態形成に作用します。永らく自然光を用いた露地栽培で人類は農業を営んできましたが、近年様々な分光分布を持つ人工光源が開発される中で、植物栽培にも応用され、ある程度望みうる光環境が構築できるようになりつつあります。
3. 　ところで、｢植物にとって理想的な人工光はどのようなもか。｣という質問を受けることがよくあります。しかし、実用的な光環境を構築する過程ではではこの質問は意味がありません。発光側のランプ、受光側の植物、その双方に様々な制約がある中で、光環境を構築していかなければならないからです。
4. 　発光側からいうと、人間の視感度特性に必要な範囲で、なるべく効率が高くなるように光源は開発されてきました。用いる蛍光体や封入ガス、電極などを、それも経済的かつ化学的に利用可能な範囲で蛍光ランプやHIDランプが作られています。
5. 　受光側である植物にとっていえば、幸い、植物の光合成有効放射域は人間の視感度特性と波長的にはほぼ一致しています。それでも、細かく見ると、波長に係わる感度特性は人間の視感度特性とは異なり、さらに光形態形成についても考慮しなければならなりません。
6. 　植物栽培に人工光を用いる場合、光源の特徴を総合的に把握して応用適用することが必要であり、そのためには光環境に関する植物の光合成、光形態形成に関するある程度単純化した評価法が用いられますが、実用施設では他の要因が加わります。基本を押さえた上での応用への発想が求められます。
7. ●藻類培養における光環境調節
8. 　栽培漁業においては、漁獲制限や種苗の放流による増産を目指すために人工種苗生産で種苗確保が必要になります。水産資源を取り巻く環境改善の遅れは、日本の漁獲生産量を減少させています。このため、今後より一層｢作り育てる漁業｣の重要性は高まり、種苗生産と放流事業を拡大していく必要があります。こうしたことを背景とした種苗生産の拡大に伴い、水産種苗生産用餌料の需要が今後、益々、増大してくると考えられます。特に種苗初期での稚仔魚介類では、口や口器の大きさに合う餌料が必要となるため小形の天然餌料の生産が不可欠になります。代表的な種苗初期餌料である微細藻類は、二枚貝の種苗生産の面から需要が増大し、大量生産技術の確立が求められています。このため微細藻類の培養システムが開発され、パイロットプラントの建設が活発化しています。
9. 　本研究では、沿岸水産資源の維持・拡大を目指した水産種苗生産の拡充に対応する水産餌料用微細藻類の培養を大規模、高効率で行なうことができる実用システムの開発を目的とします。
10. 　当テーマについては、微細藻類の大量・高密度培養生産システムの中核となる培養槽の有効適切な光環境の設定制御に関する実験検討、光放射環境設計について、また、二枚貝種苗の汎用的な初期餌料となる微細藻類の培養濃度ならびに光照射距離(液厚)の増加に伴う透過光の減衰について測定解析を行い、培養槽内の光環境のシミュレーション解析から実用システムへの手掛りを得ています。

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