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2012年更新
カテゴリ
農林水産(含食品)
キーワード
昆虫 花粉媒介 昆虫の季節適応(休眠や移動等) 害虫

一言アピール

昆虫の野外調査、飼育などを主な手法としています。基礎的な研究が主体ではありますが、応用につなぐことが出来ればと思っております。詳細はホームページでご覧ください。


研究テーマ

  1. 休眠や移動など、いわゆる生活史から見た昆虫の季節適応
  2.  昆虫をはじめとする変温動物は、哺乳類のような恒温動物と比べると、周囲の環境の変化をより強く受ける。例えば、低温下では活動できないことが多い。したがって、季節のサイクルに合わせて自らの生活史を形作っているのだが、周囲の環境は決して温度などの物理的環境だけではない。餌の不足、天敵の増加など、生物的な環境要因もまた昆虫の生活史を形作る。しかし、物理的環境と比べると、生物的環境が生活史の進化に関与するメカニズム等はわかっていない。私は、カメムシの一種であるトサカグンバイとその卵に寄生する天敵(寄生蜂)を主な材料として、両者の生活史の進化をこれら二種と寄主植物を含めた三者の関係から研究している。季節によって寄主植物を使い分けるトサカグンバイは、寄主間の移動を行うときには飛翔性向が高くなり、移動を行わないときにはほとんど飛ばない。一方で一年を通じて同じ植物を使う場所ではこのような世代間の性質の違いは小さい。この虫の卵に寄生する寄生蜂も、トサカグンバイの季節的な寄主転換の有無に応じて生活史を大きく変化させている。このようなことを野外調査で明らかにしつつ、昆虫の生活史の進化一般のより広い理解につなげたいと考えている。
  3. 甲虫による花粉媒介の果樹への応用
  4.  ハナバチの働かない有用植物について、進化の歴史をよく理解し、植物と昆虫の生物学的特性を解明することでその生産性の向上に資することが研究目標である。私はこれまで、バンレイシ科のチェリモヤやアテモヤを材料として、上記事項のうち、訪花昆虫の群集生態学的特性、花香に対する訪花昆虫の反応、また花香の化学的性質などを研究してきた。その結果、訪花者のほとんどは本来果実を餌とする甲虫であることが明らかになった。さらに、訪花者は花の香りに誘引されており、その香りは、他の多くの植物で見られるようなアルコールやアルデヒドなどではなく、ほぼエステルのみで構成されていた。エステルは果物の香りの主成分であることから、これら植物の花は果物に化学的に擬態して甲虫を誘引し、花粉媒介に利用していると考えられる。この一連の研究については科研費の交付を受け、現在は花香成分のバイオアッセイおよび昆虫の生活リズムと花のリズムの関係を解明する作業に入っている。
  5. その他、昆虫の生態に関すること
  6.  昆虫の生態・進化に関する様々なテーマに取り組んでいます。例えば、インドネシアでの現地調査により、果樹の大害虫であるミバエ類の生態とそれに基づく防除法の開発に向けた研究を行っています。熱帯アジアには、互いにごく近縁なミバエが何種も生息していてその分類さえまだ確立はしていません。その中でも大害虫であるBactrocera papayae およびB. carambolaeを中心にして、これらが同じ場所で同じように生活しているにもかかわらず「種」として(不完全かもしれないが)存在し続けていることの意味を考えています。まずは2種の形態による識別の方法を確立し、次にこれらが使う果物の違いについて、その違いが生じる原因とともに解明を進めています。さらに、これらの種の配偶システムについても行動学的な解明を目指しています。最終的にはインドネシアの果樹農家にとって最も厄介な害虫であるミバエを効率よく防除し、地域経済の発展に役立てればこんなにうれしいことはありません。

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応用分野

●農業関係・食品関係の研究機関等

主な保有技術

●昆虫類の野外調査                    ●統計解析
●花粉媒介に関する基礎的な技術              ●各種条件下での昆虫の飼育

主な保有機器・装置

●マイクロスコープ                    ●人工気象器
●匂いモニタ                       ●レーザー距離計
●放射温度計

所属学会

●日本応用動物昆虫学会                  ●日本生態学会
●日本昆虫学会                      ●個体群生態学会 
ほか

調査

●三重県内のほか、沖縄県など国内各所、国外では、インドネシア、タイ、ベトナムなどでの野外昆虫調査

審査委員など

●三重県環境影響評価委員

関連ホームページ