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2012年更新
カテゴリ
バイオテクノロジー、素材、計算化学、量子化学
キーワード
数値積分 カリウムチャンネル キャビティー イオン選択フィルター イオン透過 イオン選択 水和構造 配位構造 計算化学 量子化学 密度汎関数計算

一言アピール

生体関連分子の量子化学計算を行っています。


研究テーマ

  1. 二重指数関数型公式による数値積分グリッドの開発
  2.  近年、原子・分子の電子状態計算を行う手法として密度汎関数法が普及しており、化学反応解析や材料物性解析などに広く利用されている。密度汎関数法では、交換・相関エネルギーをエネルギー汎関数の数値積分で求めるため、計算結果は数値積分の精度に影響される。これまでに数値積分を実行するための種々の積分グリッドが提案されているが、標準的な積分グリッドについて幾つかの問題点も報告されている。本研究では、二重指数関数型公式を適用して、より効率的に高精度な結果が得られる数値積分グリッドの開発を行っている。
  3. KcsAカリウムチャンネルのイオン透過・イオン選択に関する理論的研究
  4.  カリウムチャンネルは細胞膜を貫通する蛋白質であり、イオン半径の大きいK+イオンを選択的に細胞内から細胞外へ透過し、イオン半径の小さいNa+イオンは殆ど透過しない。カリウムチャンネルによる金属イオンの透過と選択の機能について、これまで主として古典的分子動力学計算により研究されているが、汎用力場の信頼性が不十分である可能性が指摘されている。金属イオンは、ゲートからチャンネル内に侵入し、キャビティーを移動して、イオン選択フィルターを通り抜ける。金属イオンの選択性は、金属イオンの移動過程におけるエネルギー障壁の差が原因であると考えられる。本研究では、量子化学的手法である密度汎関数計算を適用することにより、放線菌由来のKcsAカリウムチャンネルに対して、金属イオン(K+イオン及びNa+イオン)の透過と選択の機能を検討している。
  5. KcsAカリウムチャンネルのキャビティーにおける金属イオンの水和構造に関する密度汎関数計算
  6. KcsAカリウムチャンネルのイオン選択フィルターにおける金属イオンの配位構造に関する密度汎関数計算
  7.  近年、放線菌由来のKcsAカリウムチャンネルについて、高K+イオン濃度及び低K+イオン濃度でのX線構造が報告された(PDB ID: 1K4C, 1K4D)。X線構造では、キャビティー内に1箇所(Scav)、イオン選択フィルター内に4箇所(S1, S2, S3, S4)、イオン選択フィルター外に2箇所(S0, Sext)の位置にK+イオンが観測されている。キャビティーのScavサイトではK+イオンの上下に4個ずつの水分子が観測されており、K+イオンは8水和構造である。イオン選択フィルターではS1-S4サイトに4個のK+イオンが観測されているが、実際の金属イオン透過は、Mを金属イオン、Wを水分子として、M(S1)-W(S2)-M(S3)-W(S4)の1,3配置とW(S1)-M(S2)-W(S3)-M(S4)の2,4配置を交互に繰り返し、金属イオンと水分子が1列透過すると考えられている。しがしながら、X線構造では水素原子が観測されないため、キャビティーでの金属イオンの水和構造やイオン選択フィルターでの金属イオンの配位構造について、金属イオンの透過に関与する水分子の配向など詳細は不明である。本研究では、量子化学的手法である密度汎関数計算を適用することにより、放線菌由来のKcsAカリウムチャンネルに対して、金属イオン(K+イオン及びNa+イオン)の安定な水和構造及び配位構造を検討している。

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所属学会

●日本化学会                       ●分子科学会

論文

●"A B3LYP study on electronic structures of [(X)mMn(μ-oxo)2Mn(Y)n]q+ (X, Y = H2O, OH and O) as a Mn cluster model of OEC", M. Katsuda, M. Mitani, and Y. Yoshioka, J. Biophys. Chem., 3, 111–126 (2012)
●"Numerical integration of atomic electron density with double exponential formula for density functional calculation", M. Mitani and Y. Yoshioka, Theor. Chem. Acc., 131, 1169, 15 pages (2012)
●"An application of double exponential formula to radial quadrature grid in density functional calculation", M. Mitani, Theor. Chem. Acc., 130, 645–669 (2011)
●"B3LYP study on reduction mechanisms from O2 to H2O at the catalytic sites of fully reduced and mixed-valence bovine cytochrome c oxidases", Y. Yoshioka and M. Mitani, Bioinorg. Chem. Appl., 2010, 182804, 18 pages (2010)
●"Theoretical study of electronic structures of [(H2O)3(O-)Mn(μ-oxo)2Mn(OH2)4]q+ (q = 2 or 3) with Mn–O bond", M. Katsuda, E. Hishikawa, M. Mitani, and Y. Yoshioka, Phys. Chem. Chem. Phys., 12, 2730–2739 (2010)
●"A B3LYP study on counterpoise-corrected geometry optimizations for hydrated complexes of [K(H2O)n]+ and [Na(H2O)n]+", M. Mitani and Y. Yoshioka, J. Mol. Struct. (THEOCHEM), 915, 160–169 (2009)
●"Mechanism on two-electron oxidation of ubiquinol at the Qp site in cytochrome bc1 complex: B3LYP study with broken symmetry", M. Shimizu, N. Katsuda, T. Katsurada, M. Mitani, and Y. Yoshioka, J. Phys. Chem. B, 112, 15116–15126 (2008)
●"A B3LYP study on the mechanism of second H2O formation in a fully reduced cytochrome c oxidase", M. Mitani, M. Inoue, and Y. Yoshioka, Chem. Phys. Lett., 440, 296–301 (2007)

著書

●第5章「高分子および磁性高分子」、三谷昌輝、吉岡泰規、物性量子化学入門(山口兆、吉岡泰規、中野雅由、長尾秀実、奥村光隆 編)、講談社 83–102 (2004)

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