一言アピール

生活習慣病や炎症疾患において酸化・ニトロ化ストレスは共通の病態を形成する。酸化・ニトロ化ストレス指標8-OHdGや8-nitroguanineを測定することで、疾病スクリーニングへの応用が期待できる。

研究テーマ

●環境化学物質および生体内因子等による複合作用による遺伝子損傷の解析
　環境化学物質は発がん物質として生体に作用する際に、生体内物質と複合作用することにより活性化される場合がある。生体内還元物質により化学物質が還元され、再酸化する際にスーパーオキサイド
(O2•-)が生じ、過酸化水素となる。金属イオン(特に鉄や銅イオン)が存在すると、非常に酸化力の強い活性酸素であるハイドロキシラジカル(•OH)となり、DNAのみならず、脂質やタンパクをも傷害する。また、解毒代謝の過程においても第一相代謝酵素により活性化された化学物質の代謝物がDNA付加体を形成したり、活性酸素を生成し、特に第二相代謝が速やかに進まない場合には障害性が高くなる。生体内還元物質や金属イオンの存在下で化学物質をDNAと反応させ、遺伝子損傷性の解析を行うことで発がん物質のスクリーニング方法の開発を目指す。
●酸化・ニトロ化ストレスのバイオマーカーの検索
　生活習慣病、特にがんにおいて"炎症"は重要なキーワードである。炎症関連発がんにおいて、慢性炎症条件下で炎症細胞および上皮細胞より産生される活性酸素/窒素種によるDNA損傷が重要であり、8-ニトログアニンは炎症に関連して生成される変異誘発性のニトロ化DNA損傷塩基である。我々は感染・炎症関連発がん過程において活性酸素/窒素種によるDNA塩基損傷8-ハイドロキシグアノシン(8-OHdG)や8-ニトログアニンが共通の分子機構として重要であることを多数報告してきた。さらに、尿中や血中にこれらのDNA損傷塩基の定量化を試み、バイオマーカーとして有用であることを見いだしている。さらに簡便で高精度な検出方法を検討すると共に、発がんの予防に有用な分子を探索する。

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論文

●Murata M, Thanan R, Ma N, Kawanishi S. Role of nitrative and oxidative DNA damage in inflammation-related carcinogenesis. J Biomed Biotechnol. 2012, 623019.
●Thanan R, Ma N, Iijima K, Abe Y, Koike T, Shimosegawa T, Pinlaor S, Hiraku Y, Oikawa S, Murata M, Kawanishi S. Proton pump inhibitors suppress iNOS-dependent DNA damage in Barrett's esophagus by increasing Mn-SOD expression. Biochem Biophys Res Commun. 2012, 421(2):280-5.
●Huang YJ, Zhang BB, Ma N, Murata M, Tang AZ, Huang GW. Nitrative and oxidative DNA damage as potential survival biomarkers for nasopharyngeal carcinoma. Med Oncol. 2011, 28(1):377-84.
●Thanan R, Murata M, Pinlaor S, Sithithaworn P, Khuntikeo N, Tangkanakul W, Hiraku Y, Oikawa S, Yongvanit P, Kawanishi S. Urinary 8-oxo-7,8-dihydro-2'-deoxyguanosine in patients with parasite infection and effect of antiparasitic drug in relation to cholangiocarcinogenesis. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2008, 17(3):518-24.

応用分野

●健康食品　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　●健康診断技術

保有技術

●DNAの酸化物・ニトロ化物の測定

保有機器・装置

●電気化学検出器付HPLC(環境分子医学分野保有機器)

所属学会

●日本衛生学会　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　●日本癌学会
●日本産業衛生学会　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　●日本公衆衛生学会
●日本環境変異原学会