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2012年更新
カテゴリ
農林水産(含食品)
キーワード
オオクチバス ブルーギル クロアワビ イセエビ 水中視程 水の光学的特性 魚類行動計測

一言アピール

水棲動物の行動生態と光など物理的な環境要因との関連について主に研究しています。環境要因の変化は行動のみならず、成長や成熟周期などの生理機能にも大きな影響を及ぼすため、この研究は、水産動物の効率的生産など、応用範囲がとても広いのが特色です。


研究テーマ

  1. ●漁具などの物体に対する魚類の水中視程
  2.  多くの魚類は餌の探索や攻撃、さらには外敵からの逃避や回避において、視覚に大きく依存していますが、餌や外敵などの物体を認識・識別する能力である視力(視精度)は、人間でいう0.1~0.2程度であり、あまり良くないことが知られています。これは光の減衰が空気中に比べて遙かに大きい水中では、物体の視認はほとんどの場合、視力よりも水中視程によって決まるからです。そして水中視程は、水自身が持つ光学的性質に加え、濁りの質や濃度、魚類の視認能力(コントラスト閾値)、さらには物体の光の反射特性と水中の輝度分布など多くの要因によって決定されます。本研究室では、これら水や物体の光学的特性、そして魚類のコントラスト閾値を計測することによって、魚類の水中視程を調べています。現在この研究を通じて、魚類にとって水中の物体が見えやすい、あるいは見えにくくなる条件が存在し、それによって餌の捕食や外敵からの逃避に成功する確率が大きく変わってくることがわかりました。今後これらの条件をさらに探求していくことで、魚を効率的に捕獲できる漁具の開発や設置条件の解明に繋げていきたいと考えています。
  3. ●魚類の遊泳能力に関する研究
  4.  魚類にとって遊泳能力は、種が生存していく上で最も重要かつ基本的な能力の一つです。ほとんどの魚類は遊泳に関わる筋肉として、血合い筋(赤色筋)と普通筋(白色筋)の2種類を有しています。前者は疲労に強いことから、長距離回遊や河川での流れへの定位など主に持続的な遊泳時に使われるのに対し、後者は大きな力を発揮できる反面すぐに疲労することから、主に瞬発的な遊泳が要求されるような場合、たとえば餌への攻撃時や外敵からの逃避時、あるいは急流遡上時などに使用されます。本研究室では、回流水槽という任意の流速を発生させることができる装置を使用して、主に淡水性魚類について、持続的および瞬発的な遊泳能力の両方を計測することによって、流域環境への適応性を評価しています。これらの計測結果は、河川の護岸工事や魚道設置など、流れの変化に対する生態系への影響を評価する上で貴重な知見を与えるだけではなく、近年河川への侵出が確認されているブラックバス類などの肉食性外来魚の流域への適応メカニズムを知る上でも重要です。
  5. ●アワビ類の新規養殖技術開発
  6.  アワビ類は高価な食材として珍重されており、本国の重要な磯根資源のひとつになっています。現在アワビ資源を増産するために、種苗放流や養殖事業が世界各地で盛んに行われていますが、前者については放流環境の悪化や捕食生物からの食害による減耗、後者については餌料等の高飼育コストに加えて高密度飼育による疾病の発生など、克服すべき様々な問題が存在しています。本研究室では、アワビ類の行動生態と光や水温などの物理環境要因との関係を研究することで、同類の成長を促進するために有効な条件を把握することに成功しました。そしてこれら研究成果をもとに、アワビ類の成長を最大限に高めるための新たな高密度飼育水槽を開発し、飼育実験を実施したところ、天然個体とほぼ同等の成長が得られることを確認しました。現在は実用化を目指して、新規開発水槽で飼育した個体の体成分分析を実施することで品質評価を行うとともに、経済性と飼育の簡便性を高めるために、人工餌料の開発に向けた研究を行っています。

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応用分野

●外来魚の生態(とくに摂餌戦略)について          ●アワビ類の増・養殖手法の開発について
●漁網・漁具の水中視程について

主な保有機器・装置

●放射照度計                       ●輝度計
●画像・映像解析装置                   ●水中匍匐性動物の活動計測装置

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