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2012年更新
カテゴリ
環境・エネルギー、土木・建築、農林水産(含食品)
キーワード
土壌 多孔質体 水移動 凍土 凍結 凍上 アイスレンズ 不凍水 土壌水 土壌物理 水文 メタンハイドレート 雪氷 燃料電池

一言アピール

土中の水・化学物質・熱移動を実験・数値解析により予測します(特に凍結現象や窒素循環)。また、関連するセンサーや測定法を開発・評価します。そして、こうした知見の土壌保全技術や他分野への応用を試みます。


研究テーマ

  1. ●土壌圏の物質循環の解析と利活用
  2.  土壌は生物活動の基盤であり、ここで生じる水分・化学物質・エネルギーの循環が土壌圏の生物生産や環境形成を担っています。持続的な農業や効率的な食料生産・農地管理を進めるためには、こうした土壌圏の物質循環を理解することが必要不可欠です。また、土壌・地下水汚染や塩類集積などの環境問題、全球的な気候変動、乾燥地や寒冷地あるいは微少重力下等の極限環境の高度利用を考える上でもこれら物質循環の知見は重要です。そこで、土壌圏の様々な物質循環機メカニズムを現場調査や室内実験を通して明らかにします。また、物質移動モデルの構築・改良を行い、数値シミュレーションにより様々な条件に対する土壌圏の水分・化学物質・熱環境の変化を予測します。
  3. ●土のような多孔質体中の水の挙動・凍結、凍上機構の解明と応用
  4.  土のような多孔質体中の水は0℃以下においても、その一部は液体状態を保持します(不凍水)。たとえば凍土の場合、強度や透水性、熱的性質が不凍水量によって大きく異なります。そこで、凍土を地盤改良等に利用する場合、不凍水量と温度の関係を明らかにする必要があります。また、土のような多孔質体が凍結すると、多孔質体中の水が凍結面近傍に引き寄せられ、純粋な氷(アイスレンズ)として析出することがあります(凍上現象)。農地においては、凍上は地盤を数十cmも隆起することがあり、植物根の切断や灌漑排水系の破壊、建造物の倒壊、春先の地耐力の低下を引き起こします。生体細胞や燃料電池の凍上はそれぞれの機能を著しく損ないます。一方で、氷晶析出は土壌・水質浄化あるいはハイドレート関連技術や新材料の開発にも応用可能です。そこで、様々な多孔質体の不凍水の保持機構や凍上・氷晶析出機構の解明と応用を試みています。
  5. ●土壌の物理的性質や浸潤特性、浸食の空間変動、季節変化の評価
  6.  土壌中の水移動を考える際に必要となる土壌の基本的性質に、土壌の乾燥密度や硬度とともに、水分保持曲線や不飽和透水係数などの水分移動特性があります。土壌中の化学物質やエネルギー移動を考えるには土壌の吸着能や熱的性質とその水分量依存性も重要です。こうした土壌の物理的性質は、わずか数十cm離れれば異なり、単純な平均ではその空間を代表する値を表すことができません。さらに、これらの性質に影響を及ぼす降水量や日射量も時間、季節によって変動します。様々な空間・時間スケールにあわせて、対象の土壌の物理的性質を評価することが必要なのです。そこで、農地の土壌侵食や流域の浸潤・蒸発特性の季節変化を対象に土壌の物理的性質の評価法の構築やモデル化を、実測値に基づき行っています。
  7. ●凍結層を持つ不飽和土中への水の浸潤過程と窒素循環の予測
  8.  北海道などの寒冷地では、秋に農地に窒素肥料をまき、春先の融雪水の浸潤を利用して土中に窒素を分配します。そこで、冬期に土壌凍結層が発達すると、融雪水の浸潤が妨げられ、春先の土中の窒素欠乏や表面流出による農地外の窒素汚染が生じます。また、凍結層下は嫌気的状態となり、窒素は温室効果ガスである亜酸化窒素に形態変化にします。このため、土壌の凍結融解を考慮した最適な施肥管理が求められています。さらに、近年の温暖化傾向により、積雪の変化に伴う農地の凍結深や融解時期の変化が報告されています。しかしながら、凍結層を持つ不飽和土中への浸潤や窒素の再分布については系統的な実験が不足しており、現状の数値モデルも融雪浸潤過程や非平衡な相転移、窒素の形態変化を表現するには至っていません。そこで、室内実験に基づき融雪浸潤や窒素循環の数値モデルの改良を行っています。
  9. ●薄膜の不凍水量、凝固点、水理特性等測定装置の開発
  10.  凍結融解にともなう多孔質体中の水分移動や氷晶析出を考えるためには、対象とする多孔質体の保水曲線や不飽和透水係数に加え不凍水量と温度の関係、凝固点を明らかにする必要があります。多くの多孔質体については、ある程度の大きさ(量)があれば、これらの物性値を測定することはそれほど難しくはありません。一方、燃料電池などの材料には、撥水性や薄膜状の多孔質体が多々あり、これらの凍結特性や水分特性を実測することは容易ではありません。そこで、既存の土壌物理的手法やNMR核磁気共鳴、TDR時間領域/FDR周波数領域誘電率測定、露点計測式サイクロメータを応用して、これらの物性を測定できる装置やセンサーの開発、測定値の評価を行っています。

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主な保有技術

●土壌水分測定、センサー開発と評価            ●土壌の水・熱特性測定
●不凍水量測定

受賞

●科学研究費審査委員表彰(2011)              ●土壌物理学会論文賞(2011)
●雪氷学会 平田賞(2004)                  ●土壌物理学会賞(2003)

論文

●Kunio Watanabe, Tetusya Kito, Tomomi Wake, Masaru Sakai, Freezing experiments on unsaturated sand, loam and silt loam, Annals of Glaciology, 52(58) (2011)
●渡辺晋生,紀藤哲矢,坂井勝,取出伸夫, 凍結面近傍の不凍水量変化に基づく凍土の水分特性曲線と不飽和透水係数の検討, 土壌の物理性, 116, 9-18 (2010)
●Kunio Watanabe, and Markus Flury, Capillary bundle model of hydraulic conductivity for frozen soil, Water Resour. Res., 44, W12402 (2008)
●Kunio Watanabe and Misako Ito, In situ observation of the distribution and activity of microorganisms in frozen soil, Cold Reg. Sci. Technol.,54, 1-6 (2008)

著書

●渡辺晋生,凍結・融解過程による多孔質体中の水分・溶質移動, 多孔体の精密制御と機能・物性評価, pp.399-407, Science&Technology, ISBN978-4-903413-34-1 (2008)
●ウイリアム・ジュリー, ロバート・ホートン著, 取出伸夫監訳, 井上光弘, 長裕幸, 西村拓, 諸泉利嗣, 渡辺晋生訳, 土壌物理学 -土中の水・熱・ガス・化学物質移動の基礎と応用-, 築地書館,ISBN4-8067-1324-4 (2006)

応用分野

●土壌汚染対策                      ●土壌改良
●農地環境整備                      ●自動車産業
●食品産業                        ●エネルギー開発

主な保有機器・装置

●土壌水分・熱特性測定装置                ●TDR土壌水分測定装置
●凍結関連装置                      ●蛍光顕微鏡等

所属学会

●農業農村工学会                     ●雪氷学会
●土壌物理学会                      ●土壌肥料学会
●Soil Science Society of America

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