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2012年更新
カテゴリ
バイオテクノロジー、農林水産(含食品)、医学・薬学
キーワード
細胞核 遺伝子 DNA複製 転写 DNA損傷修復 蛍光顕微鏡イメージング FISH エピゲノム DNAメチル化 食品機能 ストレス応答

一言アピール

動物細胞核内の様々なイベント(遺伝子・ゲノムの動態、複製、転写、DNA損傷修復等)を可視化イメージングし、基本メカニズムへのエピゲノムの関与の解明や、これらへの食品機能性成分の影響の解明を目指しています。


研究テーマ

  1. ●DNA低メチル化に伴うDNA損傷誘導機構の解明
  2.  DNAのメチル化は各細胞で必要としない遺伝子の転写を抑える機構で、固体発生・細胞分化段階でDNAをメチル化して不要な遺伝子の転写を抑え、その状態を維持するためにDNA複製時に新しくできた鎖をメチル化して遺伝子が転写しない状態を保つメチル化維持機構が存在する。メチル化維持機構の破綻は余計な遺伝子を活性化したり染色体異常を起こすことで、細胞をがん化や細胞死に導き、個体レベルでは発生異常を起こし、生活習慣病への関与も示されつつある。メチル化維持酵素の欠損等でDNAが低メチル化状態になるとDNA損傷が生じることを当研究室で見出し、これが細胞異常の原因と考えそのメカニズムの解明について、複製フォークの進行速度解析や遺伝子ノックダウンを駆使して進めている。
  3. ●分子コーミング法を用いた複製フォーク進行解析法の確立
  4.  分子コーミング法とは、顕微鏡用カバーガラスにDNA分子を一定の伸展率で引伸ばして貼りつける方法で、国内では当研究室しかできない技術である。カバーガラスのコーティングなどの改良を進める一方、細胞のDNA複製時に蛍光検出可能なヌクレオシドをDNA鎖に取込ませた後、分子コーミングでDNAを伸展固定し、蛍光顕微鏡下に複製部位を検出して複製フォークの進行速度を測定することができる。さらに、特定のDNA領域を蛍光可視化検出できるFISHを併用して、特定のゲノム領域の複製フォークの進行を解析できる系の確立を進めている。またゼブラフィシュを用いた個体レベルの解析法の確立についても研究を進める。
  5. ●栄養成分の変動に伴うDNA低メチル化とDNA損傷誘導
  6.  DNAのメチル化異常は個体発生やがん化の過程でのみ見られる現象と考えられていたが、成体における代謝変動等でも起こり得ると考えられ、生活習慣病の発症や予防との関連する可能性がある。DNAメチル化の基質はS-アデノシルメチオニン(SAM)であるが、偏食や食品由来成分の過不足等により、SAMの供給不足が起こり、一部の遺伝子領域でDNAメチル化レベルが下がる可能性も考えられる。当研究室ではメチル化維持酵素の欠損等でDNAが低メチル化状態になるとDNA損傷が生じることを見出しているが、 SAMの供給不足でも起こる可能性が考えられ、まずこの可能性を追究する。
  7. ●遺伝子の核内配置の制御による遺伝子組換えタンパク質の高効率生産
  8.  遺伝子組換え技術を利用した動物細胞での医薬品タンパク質生産手法は、医薬品タンパク質産業化近年一層注目されつつあるにもかからず、この10年以上にわたって技術開発面で特に進展はしていない。これまでにない視点、すなわち、遺伝子の核内配置制御・mRNA輸送制御・糖鎖修飾制御における技術開発を開発改良できれば、医薬品タンパク質の生産効率を挙げ、高品質タンパクを得ることができ、小規模の企業も医薬品タンパク質事業に参画できるようになる。バイオ産業分野における数少ない成長産業の有用タンパク質製品市場で日本産業界がリードできると考えられる。当研究室では遺伝子の核内配置制御技術をターゲットに研究を進めている。
  9. ●エピジェネティクスの変動と遺伝子間コミュニケーション等核内配置の変化
  10.  転写誘導される2つの遺伝子座が、核内で急速に相互作用(kissing)する現象、遺伝子間コミュニケーションが知られている。栄養状態の変化、すなわち、エネルギー代謝経路の阻害や葉酸欠乏でS-アデノシルメチオニンやヌクレオチド合成レベルが低下し、クロマチンのエピジェネティック修飾が変動した際に、この現象がどのような影響を受けるかについて解析する。また、遺伝子の核内配置や核内ネットワーク構造の足場と考えられている核マトリックスと遺伝子の相互作用についてもFISH等で解析し、エピジェネティクスとの関係を明らかにする。
  11. ●食品成分によるストレス応答タンパク質HSP70の発現制御
  12.  細胞は熱や重金属、その他のストレスに対する防御手段としてHSP70をはじめとするストレス応答タンパク質を発現し、ダメージから身を守る機構を備えている。がん細胞も同様で、抗がん剤等のストレスから身を守るためにHSP70等を発現する。一方、食品由来機能性成分のケルセチンがHSP70の発現を抑えるという報告があり、食品由来機能性成分をうまく利用すれば、投与抗がん剤量を低減できる可能性が考えられる。本研究では、新たな食品由来機能性成分の探索や種々のストレス応答タンパク質の発現制御機構の解析を通じて作用メカニズムとその応用に関して研究を進める。さらにエピジェネティクスの関与についても解析する。

所属学会

●日本農芸化学会                     ●日本生化学会
●酵素工学研究会                     ●日本分子生物学会
●日本人類遺伝学会                    ●日本動物細胞工学会
●日本細胞生物学会                    ●日本エピジェネティクス研究会
●地域イノベーション学会

応用分野

●ゲノム・遺伝子診断                   ●食品由来機能性成分の機能解析
●遺伝子組換えタンパク質生産

主な保有技術

●FISH(ゲノム、遺伝子可視化解析)
●蛍光顕微鏡イメージング
●分子コーミング(DNAをカバーカラスに貼りつける技術)

特許

●特開2008-249565 直径が10倍(面積100倍)大きい高解像度解析用ヒト細胞核標本の作製方法

論文

●染色体複製と高次エピゲノム 細胞工学 秀潤社 31 8 909-916(2012.07)
●核マトリックスとゲノムダイナミクス 生体の科学 62 5 400-401(2011.10)
●核内ゲノムダイナミクスの可視化 生体の科学 62 5 500-501(2011.10)
●Cell cycle-dependent accumulation of histone H3.3 and euchromatic histone modifications in pericentromeric heterochromatin in response to a decrease in DNA methylation levels Exp. Cell Res. 316 17 2731-2746(2010.10)
●PARP-1 ensures regulation of replication fork progression by homologous recombination on damaged DNA J. Cell Biol. 183 7 1203-1212 この号の表紙に写真掲載(2008.12)
●Non-denaturing fluorescence in situ hybridization to find replication origins in a specific genome region on the DNA fiber Biosci. Biotechnol. Biochem. 71 (2) 627-632(2007.02)

受賞

●農芸化学奨励賞 日本農芸化学会(1996.3)

その他科研費等

●挑戦的萌芽研究 H23~H25 遺伝子の細胞核内配置制御機構とその組換えタンパク質高効率産生細胞構築への応用
●基盤研究(B) H22-H24 発生・分化過程における哺乳類染色体の普遍的構築原理とその意義

関連ホームページ

研究資料