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2012年更新
カテゴリ
医学・薬学
キーワード
放射線治療 がん

一言アピール

放射線治療は機能・形態を温存して癌を治す特徴がありますが、近年、治療法の進歩により急速に発展をとげている領域です。


研究テーマ

  1. 肺癌に対する定位放射線治療
  2.  定位照射は多方向からビームを集中することにより、比較的小さな腫瘍に対して大線量の照射を短期間で行う高精度の放射線治療です。肺癌に対する定位照射(図1)では、腫瘍に放射線を集中することにより正常肺への線量を低減できるため通常の照射よりも肺線維症などの合併症が少なく、なおかつ腫瘍には高線量が投与されるため高い治療効果が期待されています。一方、腫瘍にmm単位で照準を合わせるために、照射の際の位置合わせには高い精度が要求され、画像誘導放射線治療などの新しい治療法が応用されています。これまでの臨床研究では、T1,T2肺癌に対する定位放射線治療は手術に匹敵する局所制御率が得られていますが、より合併症の少ない方法を求めて最適な空間的・時間的線量分布に関する研究を行っています。
  3. 密封小線源を用いた放射線治療
  4.  小線源治療は、腫瘍局所への線量集中性に優れ、ラジウムの発見以来癌に対して行われている治療法で、子宮頚癌をはじめとして食道癌、肺癌、胆管癌、頭頸部癌、および前立腺癌などに適応があります。近年では術者の被ばくがないRALS(Remote After loading system)が普及しており、最新の装置では画像誘導による小線源治療計画が可能になりました(IGBT:Image Guided Brachytherapy)。これまでの小線源治療では、線源を幾何学的に配置していましたが、IGBTでは治療計画時にCTやMRIの画像をfusionすることにより、腫瘍の形状に合った線量分布を作成することが可能になりました。当科では子宮頚癌に対しMRIを用いたIGBTを臨床応用し、最適な線量分布に関する研究を行っています(図2)。また、肺癌に対する小線源治療では、気管支腔内から照射するためのオリジナルのアプリケータを開発しており、線量分布に関する基礎的・臨床的研究を行っています(図3.4)。
  5. 強度変調放射線治療の研究
  6.  多方向からビームを腫瘍に集中させることに加え、それぞれのビーム内の強度を変調させることにより、より腫瘍の形状に沿った複雑な線量分布が得られる治療法です。多方向からの照射のみでは、例えば内側にへこんだ形状をつくることはできませんが、腫瘍の厚みに応じて照射野内の線量を変える(強度変調)ことにより、凹型の線量分布を得ることができます。特に、前立腺は馬蹄形の形状の凹型の部分に直腸が存在し、従来の照射法では直腸に前立腺と同じ量の放射線が照射されるため、直腸障害を考慮するとあまり多くの放射線量を投与することができませんでしたが、IMRTを用いると直腸の線量を低減することができ、高線量を投与することが可能になりました。また脊髄をさけて椎体に照射する場合や、リスク臓器の多い頭頚部癌などにも応用が可能です。
  7. 画像誘導放射線治療の研究
  8.  外照射の位置合わせは、通常は皮膚マーカーを用いて患者さんのセットアップを行いますが、この方法では体表面の位置合わせであるため、体内の腫瘍に正確に照射されているかどうかはわかりませんでした。定位照射やIMRTを行うためには、腫瘍に正確に照準を合わせることが重要となるため、腫瘍や体内の重要臓器を画像化して位置合わせを行う必要があります。IGRTには様々な方法が考案されていますが、当院ではライナックに装着されている簡易型のCT(コーンビームCT)を用いて行っています。患者さんのセットアップを行う際にコーンビームCTによって画像を取得し、これを計画画像と比較して位置誤差を自動修正するもので、従来の体表面につけたマーカーによる位置合わせに比べて、位置合わせの精度が格段に向上しています。当院では、通常の照射時にもIGRTを用いていますが、特に前立腺癌のIMRTでは、金マーカーを前立腺に刺入しIGRTの精度を高める研究を行っています。

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所属学会

●日本医学放射線学会                   ●日本放射線腫瘍学会
●日本肺癌学会                      ●日本気管支鏡学会

論文

●野本由人、他 高線量率気管支腔内照射のガイドライン 日放腫会誌 13:217-222,2001
●Nomoto Y, et al. High dose rate endobronchial brachytherapy using a new applicator Radiother Oncol 45; 33-37,1997